新年のご挨拶
謹 賀 新 年
旧年中のご厚意に心より御礼申し上げますと共に、謹んで新年のお慶び申し上げます。
旧年中はコロナ禍の折、企業の財務的脆弱性が露呈され、キャッシュフローと内部留保の重要性を再認識させられる一年となりました。中小零細企業のみならず、大企業までもが手元流動性の最大化を求め、不確実性の高まる環境に必死で対応を続けてきました。
セーフティーネットであるコロナ関連融資は、多くの制度融資にて実質金利負担が無く、債務超過の企業でも容易に借入を実現することが出来ました。借入後の当初1年から2年間は返済据置措置が設定され、借入後の返済に伴う財務キャッシュフローのマイナスも生じないという特殊性を有しています。このコロナ関連融資を調達した企業の多くが、2022年より返済の開始を迎えます。
借入の返済に伴う財務CFのマイナスは、本業であれば営業CFのプラスにより、不動産や株式等の固定資産の売却であれば投資CFのプラスにより、賄うほかありません。何れにせよ、FCF(フリーキャッシュフロー)の創出が求められる今日、業種によっては引続き外部環境は好転せず、先行きの見えない暗雲が漂っています。
報道や識者のコメントに耳を傾けると、コロナ関連融資による借入金については、将来は債権放棄される(金融機関は債権放棄すべきである)等の意見がございます。又、中小企業の多くの経営者も、いわゆる徳政令を期待している事実もございます。一方で、私見としてそういった政策判断は有り得ないと考えている次第であり、今後は一層の淘汰が進行するものと考えられます。
新型コロナウィルスはウィルス感染症による経済の低迷を引き起こしましたが、今後は大規模な災害や外国企業の破綻、政情の不安定化等、自助努力では如何ともし難い外部環境の激変が起こり得る可能性は、十分にございます。「未来のことは、どうなるか分からない」ことを「不確実性」といい、金融業界ではこの「不確実性」のことを「リスク」と呼称しています。
リスクに備えることはつまり、財務的にはキャッシュフローの多寡と内部留保の厚みしかありません。貯まったカネの殆どを固定資産への投資に回したり、節税のために利益を最小化して、目先の納税を回避した結果として内部留保の最小化を図ることは、経営的に誤りであると断定出来ます。多くの経営者は「未来」しか見ていませんが、未来を見据える前提として、「足元」がしっかりとしていなければなりません。ここでの未来とは、経営者の思い描く事業計画のことを指し、ここでの足元とは、B/S上の内部留保とキャッシュフローのことを指します。
企業経営に於ける持続的発展(Sustainable Development)を財務構造的に追求し、投資と留保、利益とキャッシュフローの整合性を担保した経営コンサルティング業務を、本年も継続致す所存でございます。本年も、皆様方のご指導・ご鞭撻を賜りますよう、何卒宜しくお願い申し上げます。
令和4年1月1日
アジア太平洋マネジメント
代表 青木道生